体をぎゅうっと抱きしめて、すこしはっきりした声で囁かれる。その間にも遼雅さんからの口付けがなくなることはないけれど、「お弁当、作ってもいいですか?」と聞いたら、渋々手を離してくれるようになった。


『お弁当は、たのしみです』

『ありがとうございます』

『料理中、ちょっとだけ、邪魔してもいいですか』

『ちょっとだけ、なら……?』


起きてすぐのキスはなくならないけれど、お布団の中で甘やかされる時間は少し減ったように思う。

代わりに、お料理中にふらりと近づいてきて、後ろから抱きしめられたり、不意打ちでキスをしてきたりするようになってしまった。


『ゆずはさん』

『はい?』

『背中、小さくてかわいい』

『きゃっ、突然触らないで、ください!?』

『あんまり手元ばっかりあつく見つめているから』

『ええ?』

『構って欲しくて、触ってしまった。怒ってる?』

『う、うう、おこって、ないです』

『よかった。柚葉さんは今日もかわいい。お弁当、たのしみです』

『もう……』


遼雅さんがあんまりにも上機嫌だから、何も言えないまま料理を続けてしまう。


遼雅さんからは、夜はすこし遅くなってでも家で食べるようにしたいと言われた。

「3食とも私の料理で大丈夫ですか?」と聞いたら「柚葉さんの手料理目当てに毎日頑張っています」と微笑まれてしまって、これもまた、何も言えなくなってしまった。