10分なんて、すぐに過ぎてしまう。

ちらりとデスクに置かれている時計を見ようとしたら、意図に気づいたらしい人が、片手で時計を倒してしまった。

倒した手から辿るように遼雅さんの瞳に視線を戻して、あつく潤んだ熱に胸がほどけてしまう。


「りょ、う」

「もう、すこしだけ」


囁くまま、否定もさせてくれない熱が唇に触れる。可愛らしい音を立てたかと思えば、簡単に舌を割り入れてきて、下唇を舐めたり、齧ったりしている。

すこしも止まらなさそうな唇にくらりと参って、そのままあごから首筋に唇を寄せられたら、耐えられずに声が漏れた。


「かい、しゃ」

「うん」

「……っだめ、です、ん」


一向にやまないペースで、息がもつれる。抗議した私の指先を掴んだ王子様が、笑って提案してくれる。


「ゆずは」

「つづきは、今夜ベッドで」

「俺の機嫌直すの、手伝ってください」


危険な王子が恭しく口づける薬指に、逃げる場所すら浮かばない。


「本当、かわいい。俺の奥さん」


最後にぴったりと身体を結ぶように、あまくやさしく抱きしめられたら、指先なんて、ただずっとあついまま、痺れ続けてしまう気がする。


橘遼雅は悪い人です。