想像できない。

イメージが全くなくて、言われている意味を理解するのに時間が必要だった。ぼうぜんとしていれば、上のほうで笑い声が聞こえてくる。

抱き寄せてくれていた腕の力が緩んで、すこしだけ体を起こしてみる。私がそうすることを知っていたかのような顔をしている遼雅さんが、いたずらをする子どもみたいな声で囁いていた。


「さっきはかなり、気分が悪かったです」

「え、あ」

「柚葉が来てくれたから、元に戻りました」

「そ、れなら、よかったです」

「さっきの峯田さん、結婚式にもきていましたね」

「あ、幼馴染、で」

「会社も同じ?」

「ええと、そうですけど」

「そうなんだ」


聞いたわりに、反応がうすい。

相変わらず笑っているのに、あんまり気分がよさそうに見えないから不思議だ。こんなにも雰囲気に出してくることも珍しいと思う。

機嫌が悪いと、笑っていてもすこし、不機嫌なイメージが出てしまうらしい。相当近くで会話をしていなければわからないような変化だ。


「また、なにか、嫌なことがありましたか?」


真剣に聞いているのに、遼雅さんはすこし呆然としてから、小さく笑い出してしまった。