緩んだ遼雅さんの腕の力が、私に顔をあげさせてくれる。逆らわずに見つめたら、やさしい瞳が私を射抜いていた。


「ゆずは」

「は、い」

「今日もかわいいです」

「ぜんぜん、そんなことないです、よ」

「本当は今すぐほしいけど、我慢します」

「……うん、と、偉い、です……?」

「あはは、ありがとう。うれしい」


褒められている人が、なぜか私の頭を撫でてくれている。

不思議な現象に笑って、もう一度音もなく近づく人の唇の熱を感じた。遼雅さんとのキスは好きだ。ふにゃふにゃになる。もっと近づきたくなる。

危険な、匂いがする。


「ご褒美もらっても、いい?」

「う、ん?」

「昨日、頑張ったから、今日は定時で帰れると思います」

「え、あ」

「明日はもちろん、休みです。ゴルフの接待も回避しました」

「遼雅さ、ん……?」

「今夜、たくさんもらっていい?」

「つ、かれてます、よね」

「きみが今日、ぐっすり眠らせてくれたおかげで、朝から欲情するくらいには健康です」


ストレートな言葉で胸に突き刺さる。

こんなにも求められて、断れるような人は、この世界にいるのだろうか。

私の手を取って、嵌められている指輪を見て目を細めている。いつもと同じように口づけて、もう一度口を開いた。