「……ねぇ柳。山下君の事、まだ好きなの?」

私は気になっていた事を聞いてみた。柳は質問に驚いた表情をしたけど、座ったまま暗くなった空を見上げて答えてくれた。

「そうね……まだ気持ちは残ってるかな」

「そうなんだ」

私も一緒に暗くなった空を見上げた。そして考える。

私の気持ちって今……

ちょうどその時、私の携帯が鳴り始めた。安住ちゃんかなと思い急いで携帯を取り出して確認する。

えっ……真尋先輩?

慌てて携帯を隠し『ちょっと電話してくる』と柳に言い残して、少し離れたところに移動した。

「もしもし」

「良かった、電話に出てくれて」

「えっ……何かありました?」

……謎の沈黙。真尋先輩どうしたんだろう。

「今、少し会えない?」

電話を切った後、柳に『学校の知り合いに会ってくる』と言って私は真尋先輩の元へ向かった。

真尋先輩は今、この花火大会に来ているらしい。人混みを避け人気(ひとけ)のない川沿いの土手にいると言っていた。

「真尋先輩」

ハァハァと息を切らしながら真尋先輩に声をかける。

「呼び出してごめんね。友達は大丈夫だった?」

私は大丈夫ですと言いながら、真尋先輩の隣にちょこんと座った。

「先輩こそ友達は大丈夫なんですか?」

「男だけで人混みを歩いてたら他の女子に頻繁に声かけられてさ、ゆっくり出来ないし断るのも疲れるから別行動にしたんだ」

さすがモテ男子。宮原先輩がこのセリフを聞いたら贅沢だって言いながら怒りそう。