結局サッカー部には行かず、私は今、一人で中庭にいる。中庭には私以外誰もいない。でも色んなところから部活祭の盛り上がっている声が聞こえてくる。

「穂花、連れてきたわよ」

優莉の声がして私はパッと振り向く。そこには優莉とレンタル彼氏としてサッカー部から連れ出してもらった山下君がいた。

山下君は私を見て動揺しているみたい。眉間にシワが寄っている。

「じゃあ私は先に茶道部に戻るから」

優莉は山下君を残して中庭からサッと立ち去った。

二人になるとやっぱり気不味い。でも話がしたくて優莉にお願いして連れてきてもらったから、きちんと話しなきゃ。

「ごめんね、連れ出しちゃって」

「いや、レンタル彼氏とかやりたくなかったしちょうど良かった」

そして沈黙……私達は目が合うとパッと目を逸らした。

「私がサッカー部に行くと周りに気を使わせてしまいそうだから、友達に頼んだんだ」

「さっきの美園さんっだっけ?彼女は男子の間でも人気があるから、俺がレンタル彼氏に指名された時めっちゃ先輩達に睨まれた」

私はあははと声に出して笑ってしまった。その笑いを皮切りに、私達にあった気まずさが薄れていく。