「二人にはこの衣装が似合うと思う。隣の教室に更衣室を準備してるから着替えてみて」

私達に半ば強引に衣装を渡し、森野先輩は完全に断れない雰囲気を出した。私と優莉は森野先輩の気迫に負け、仕方なく隣の教室で着替えを始める。

教室の中には一人一人着替えができるカーテンで仕切られた更衣室が用意してあった。一体どこから持ってきたのかは謎だけど……。

しかし森野先輩に渡されたこの衣装…やっぱり『アレ』だよね。うーん、普段こんな服着る機会もないし、恥ずかしいけど何かノリノリになってきたぞ。

私は衣装に合うように髪型もお団子を作っていたゴムを外し、ボサボサの髪をくしで整えていく。

「こんな感じかな。優莉、着替え終わった?」

隣の更衣室で着替えている優莉に声をかける。

「……着替えたけど」

恥ずかしそうに小さな声で返事が返ってきた。優莉の衣装はどんなやつかな。楽しみにしつつ、私達は『せーの』でカーテンを開ける事にした。

「せーのっ」

カーテンを開けてお互いの衣装のお披露目だ。

優莉の衣装はパッと見て分かる。白雪姫だ。顔を少し下げて恥ずかしそうにしているけど、すっごく似合っている。

「穂花の衣装ってアリス?っていうか髪型まで変えたの?」

そう、私の衣装は不思議の国のアリスだ。

「あはは、やり過ぎた?」

髪の毛を触りながら照れ笑いをする。

「取り敢えず、森野先輩の元へ戻ろうか」

私達は教室のドアを少しだけ開き、顔をひょこっと出して人が居ないのを確認し、衣装を着たまま急いで隣の教室へ戻った。