その日の夜、私は香月先輩と携帯で話をした。

「部活祭って盛り上がりそうですね。何か楽しみ〜」

「そうだね。新入部員獲得に向けて面白そうな企画をぶっ込んでくる部もあるだろうね。あっそう言えば昨日言い忘れたんだけど……」

「何ですか?」

「二人の時は名前で呼んでね、穂花ちゃん」

穂花ちゃんって…名前で呼ばれ私は一瞬ピタッとフリーズする。

「えっ!?な、名前で……ですか?」

「だって俺、彼氏だし。ダメ?」

電話越しだからお互いの顔は見えないけど、何となく先輩の語尾に音符がつくような話し方から、ニッコリとした表情が想像できる。

「ダメ……とかではないんですけど…えっと」

私は突然のお願いに動揺を隠せないでいた。

普段、男子から名前呼びをされる事なんてないから、先輩に『穂花ちゃん』と言われただけで私は恥ずかしくてくすぐったい気持ちになっている。

そして私の顔の熱がどんどん上昇していく。

「えっと、えっと……」

顔が真っ赤になり目をグルグルさせながら、どう返事しようか一人でテンパっていた。

「ごめんごめん。無理はしなくていいから。気が向いたら名前で呼んで」

私のテンパリが分かったのか、香月先輩はクスッと笑いながらそう言った。