私が悩んでいるのが通じたのか、タイミング良く香月先輩の方からメッセージが届いた。

『大丈夫?』

さて、香月先輩へ何て返信しよう。詳細を事細かく送ろうか、いやだらだら長い文章を送るのもどうかと思うし…

色々考えたけど、結局一言『大丈夫です』と返信した。

そしてメッセージを送信してからすぐに、香月先輩から着信があった。携帯を手に持っている私は速攻で着信にでる。

「もしもし」

「電話に出るの早いね。今、話できる?」

「は、はい。大丈夫です」

私が電話に出るのが早過ぎたのが可笑しかったのか、香月先輩はクスッと笑いながら話す。

「……元気そうだね。彼氏とは仲直り出来た?」

「あはは……実は別れちゃいました」

そう、今日私は帰り道で山下君に別れようと言った。山下君は謝ってくれたし、嫌いになった訳でもないけど、私は恋愛に疲れたのかもしれない。

その思いを香月先輩に話した。

「そっか。もしかして今泣きそう?」

「今は……勉強に集中して現実逃避しているので大丈夫です」

「はは、じゃあ今日は泣くのは我慢して、明日になったら……胸を貸してあげるから思いっきり泣いていいよ」

「えっ……」

香月先輩って、冗談とか言うタイプだっけ?何処までが本気で何処からが冗談か分からないよ。

「明日、学校が終わったら俺の家においで」

「先輩の家に……ですか?」

「あれ?もしかして何か警戒してる?」

少し意地悪そうな声のトーンになった。やっぱりからかわれてるだけかな。電話口で私があたふたしていると、香月先輩はまたクスッと笑った。

「紗倉さんって面白いね。美味しいケーキあるから一緒に食べよう。明日待ってるから」

断る理由もないし、『はい』と返事して携帯を切った。そして両手を天井に向けて伸ばし、ん〜と筋肉をほぐす。

「よし、勉強勉強」

一息ついて置いていたシャーペンを手に持つ。彼氏、友達、恋愛…今は何も考えたくないので、また勉強という名の現実逃避を始めた。