「先輩、私……」

ここで自分の気持ちを言えたらどんなに楽だろう。私は下を向いて(うつむ)いてしまった。

外からは体育祭後の賑やかな声が聞こえてくる。後片付けもまだ途中だ。早く外に戻らなきゃ……って現実逃避しようとしてるし。

そんな事考えていると、後ろからふわっと優しく抱きしめられた。私の前に座っていたはずの真尋先輩が、いつの間にか私の後ろに来ている。

「穂花ちゃんはこれから『本当の恋愛』が出来そうだし、俺との『恋愛ごっこ』は今日で終わりにしよっか。我がままに付き合ってくれてありがとう。楽しかった」

耳元でそう囁くと真尋先輩は私から離れた。

「体育祭の後片付け行かなきゃね。じゃあ俺先に行くから」

真尋先輩はニコッと微笑んで生徒会室を出て行った。

「何で小谷先輩と付き合う前提で話するのよ」

真尋先輩が居なくなった後、私はまた机にガバッとうつ伏せになり一人呟いた。