「......うん、わかった」


無理にでも言ってしまえ。


体に命令を出して、震えた声で言う。


彼は満足そうに、待っていたというように、私を抱きしめた。



「断られると思った...はぁ、絶対離さないよ」



失意、とはこの事だ。


失望感。


もう私はいいのだ。


彼に委ねてしまえばいい。


彼から目を逸らして、カーテンの隙間から外を見る。


サザンカが咲いていた。


...もう、そんな季節か。



「ふふ、頑張ってお迎えしてよかった...」


「うん」



もう冷めたうどん。


食べきってしまおうと、蓮華によそって自分で食べる。


僕が食べさせるよ、と彼は私の手から、蓮華をとる。



「...キミはわざと、僕から遠ざかって、愛から退いていたんだと思った」


「私は...」


「想いを伝えてみれば、変わるものだね」



私には、愛というものが見当つかなかった。


太宰治が、人間の生活というものが見当つかなかったように。


彼の言葉に寄せて言うならば、


愛の無い生涯を送ってきました。私には、
愛のある生活というものが、見当つかないのです。


という感じだろう。