「ええっと、一旦落ち着こうか」


彼女をなだめるように、その肩に手を置いた。


「でもまた今度いつこうしてお話しできるかわからないから、今すぐ返事を聞かせて欲しいんです」


彼女は何かに取り憑かれたように、キッとした表情で詰めよってくる。


「いやだからさ、今はちょっと」


後退りしたら壁に背中がついた。


うわっ、河井のやつこっちを見てるし。


見れば先生はじいっと俺を凝視してる。


俺の出方を待っているみたいだ。


これは、断りにくいぞ。どうすりゃいいんだ。


絶対絶命のピンチに立たされて、黙りこむ。


「私、初めて会った時から好きで。
覚えてますか?私のこと。あの入学式の日に助けてもらって凄く嬉しかった。それから忘れられなくて」


ああ、彼女、目がトロンとしてて完全に自分の世界に入ってる。