(side花)


「花、もっとこっちおいで。それともう少し口をひらいて」


何度目かのキスの後、千景くんは落ち着いた様子でそう言ってにっこり笑った。


綺麗な笑顔にうっとりしていたら、またすぐに口づけされる。


「んっ……」


千景くんの柔らかい唇は熱くて心地よくて、私の頭の芯を甘くしびれさせていく。


彼が唇を離す一瞬にあえぐように息継ぎをするだけで精一杯。


角度を変えて幾度も触れ合う唇。


初めてキスをしたあの時よりもずっと激しい。


「ハアッ……」


身体中が熱くほてりだしてへんな声が出ちゃって恥ずかしい。


心臓もバクバクと暴れてる。


ああ、なんて、しあわせな時間。


でもでもこのままだと……大変なことになっちゃいそう。


そう思ったのは、彼の大きな手がブラウスをなぞるように触れてきたから。


えっ、えっ、これってもしかしてキスだけではすまないのでは?


「待って、ちかげく……ちょっと休ませて」


少しだけ待って、私の思考回路がいま誤作動を起こしかけてる。


いったい、いま私の身になにが起きてるの?


どうしてこうなったのか、整理してみよう。


ここは彼の部屋。
そしてベッドの上。


かねてからの予定通り、今日は勉強をしに来たはず。


だけど、彼の家には誰もいなくて。


玄関の前でどうしようって戸惑っていたら、千景くんは体育祭のときみたいにお姫様抱っこで2階の彼の部屋まで私を連れて行った。


そして、ベッドに降ろされたと思ったらいきなりキスされて。


そこからの記憶がほぼない。