冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。

ちゃんと見ていてくれてるんだな、って思った。


「……」


だけど、せっかく褒めてくれた彼にありがとうの一言も言えない。


なぜだろう、胸の奥に石が詰まっているみたいで素直になれないんだ。


これまでの私ならこんな時、天にものぼる気持ちになって彼にニコニコ笑うことができたのに。


それからゆっくりとスタートラインの場所まで移動した。


ちえりちゃんと大原くんのカップルも私たちの後につづく。


黙って歩く私たちとは対照的に後ろからこんな会話が聞こえてくる。


「ちえりん頑張ろうな。今日も可愛いなぁ」


「やだ、大原くんたら。またそんなこと」


照れながらもちえりちゃんは嬉しそうな声。


「ええやん。こんなんイチャイチャしたもん勝ちやで。
だってそういう競技やろ?」


「そ、そうよね」


ほんとにいつも仲良しで羨ましいな。


「おーい前のお二人さんも、もっとくっついたら?」