(side花)


「千景くん……」


信じられない光景を目の当たりにして石のように固まって動けない。


彼が私の目の前にいるなんて。


絶対に来てはくれないだろうってあきらめていたのに。


千景くんはラブラブカップル競争にはもう一緒にでてはくれないだろうなって思ったから、拓海くんに一緒に来てもらった。


拓海くんにおねがいして千景くんの代わりを引き受けてもらおうと思ったんだ。


棄権なんてしたら、今まで準備してきてくれた人たちに迷惑をかけてしまうと思ったからどうしても出場しなきゃって。


だけどまさかこんなことになってるなんて。


千景くん、どうして来てくれたの?


だってもう君は自由になったんだよ。


もう私になんて縛られる必要ないのに。


千景くんはいつもよりも、固い表情で私に近づいてきてすうっと息を吸い込んだ。