(side花)


『答えられないということは、彼女を好きで付き合いだしたわけじゃないんだね?』


『私があのとき君を追い詰めるようなことを言ってしまったからだね。
君にはすまないことをした』


実行委員の本部のテント前を通り過ぎていく千景くんを見つけて、引き寄せられるようにフラフラ近づいていってしまったのが運の尽きだったのかもしれない。


河井先生との会話を偶然聞いてしまった私は、奈落の底に叩き落された。


その瞬間、おとぎ話はもう終わってしまった。


彼が私なんかと付き合ってくれてどんどん仲良くなっているって幻想は音を立てて崩れていったんだ。


だけどズルい私はこんなことも考えてしまう。


もしあんな話さえ聞かなければ、私はまだ幸せな世界にいられたのに。


そんなのむなしいだけなのに。