「花、頑張れ」


彼女が俺に望んでいた言葉。


今の俺にはこんなことしかできないけど精一杯気持ちを込めた。


「俺がちゃんと見ててやるから」


花のことを信じて待っているよ。


「うん、うん」


嬉しそうに何度もうなずく花。


正門付近にいた生徒たちが一斉にこちらを向いたから恥ずかしかったけど、俺はなおも続けた。


「……でも無理すんな」


「うん」


「じゃ、じゃあな」


「うん」


うん、としか言わない花の瞳が少しうるんでいるような気がした。


俺は、彼女に背を向け前だけを向いてズンズン歩き出した。


「おい、待てって。あれだけでいいのかよ?」


伊達は怪訝な顔をして追いかけてくる。


「いいんだ」


「冷たくないか?」