「なにって、別に何もしていませんよ。ただ話していただけです」


河井先生の質問に千景くんは淡々と答える。


だけど、さっきまでのくだけた表情はスッと消えている。


どこか警戒するような硬い口調でつづけた。


「なにか俺たちに用ですか?急いでいるのでもう帰りたいんですけど」


「雨城くん、君には以前ああ言ったけどね。これはちょっとやりすぎじゃないかね?
学校内であからさまに手を繋いだり。
それに昨日のことだって……」

そこまで話すと河井先生は気まずそうに私の方を見て、口をつぐんだ。


手を繋いでいることを咎められているみたい。


そうか、まだ正門を出ていないし学校内でこれはまずかったかな。 


急いで、彼の手を離そうとしたけどなぜだかできなかった。