「さあ、どうだろ……気持ちがだらけそうで怖いな」


「ええっ、どうして?」


焦って素っ頓狂な声を上げたら、彼は握った手に力を込めて少し屈んだ。


そして私の耳元に触れるくらいの距離でささやく。


「嘘だよ、7時間授業の疲れが吹っ飛ぶくらいに花の顔を見たら癒される」


「……あ、う。そっか」


いきなりの甘いセリフに身体がカッと熱くなった。


あれれ、どうしたんだろ。


こんなに、デレてる彼は凄く珍しい。


どちらかというといつも私の方が押してばかりだったから、逆の立場に慣れていなくてドキドキしてしまう。


「ん?どうした、花。顔が赤いぞ。風邪でもひいたかな」


からかうようにそう言って私のおでこに手を当てる彼。


「あ、そうじゃなくて」


ううっ、千景くんたら絶対にわかってるくせに、わざと気づかないふりをしてとぼけてる。