その悲しそうな顔を見た途端に、胸の奥がキュッと絞られるような気がした。


「子供の頃のキスなんてカウントしなくていいよ」


「……う、でもやっぱり」


だけど、俺の言葉でさっきのことを思い出したのかまた泣きそうな顔をした。


「千景くん、私のこと嫌いにならないで」


「嫌いになんてならない」


「本当に?」


「ん」


その時、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ったけど、気にも留めなかった。


少し身をかがめて彼女の頬に手を添えた。


恥ずかしそうに瞳を細める花が可愛くて、ドキッとする。


その瞬間、俺と彼女の時間は止まる。