冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。

「お医者さんの千景くんに診察されたいな」


「……」


彼をじっと見つめてそう言ったら、目を逸らされた。


「千景くんがお医者さんになったら、1番初めのお客さんになりたい」


「お客さんって。
なにバカなこと言ってんだよ。
どこも悪くないのに診察に来るなんておかしいだろ」


「そっか、じゃあ千景くんがお医者さんになれるようにずっとそばで応援するね」


「ずっと?」


「うん」


あ、でも図々しいこと言ってるかな私。
この先もずっと一緒にいたいって意味に聞こえたかな。


しばらく見つめ合ってどちらからともなく下を向いた。


な、なんだろう。息がうまく吸えない。
空気が、酸素が甘すぎて。


「適当に座って」


沈黙を破ったのは彼の声。


「あ、でも私すぐに帰るから」


「どうして?今きたばっかだろ?」