冷たい千景くんは10分だけ私の言いなり。

「あっ、ちょっと声に出して読まないで」


だけど恥ずかしくてたまらない。


「俺好きだよここの最後のが特に」


彼は柔らかい笑みをむけて、「大丈夫だよ」って言ってくれた。


好きって言ってくれた。


そんな風に褒めてもらえたのは初めてで。


それに彼の笑顔を見たら胸がトクンって鳴った。


不思議な感覚だった。


「俺がここで見ててあげるから、伝えて来たら?」


どうして、彼にそう言われただけでこんなに心が暖かくなるんだろう。


今日会ったばかりの初対面で名前も知らない人なのに。


「あ、えと……私全然だめで、うまく話せないし」


だけど臆病な私は、まだ躊躇してしまう。


本当はこんな私のままでいたくないのに。


いつだって一歩前へ踏み出す勇気が欲しいって思っているのに。