会社につくと二人は社長室に、私は自分のデスクに行き仕事を始める。




無我夢中で仕事をしてると、頭の上にぽんと何かが置かれた。




振り向くと、社長がいた。




「どうしました?」




「時間。あいつはもう帰ったし、まだしてたんだ。」




「時間…?」




時計を見ると23時になっていた。




「え、もうこんな時間…」




「もしかして気が付いてなかった?」




「はい…」




「すごい集中力だね。」




「すいません、すぐに出ますね。」




「家まで送るよ」




「大丈夫です。旦那が迎えに来てくれるそうなので…」




「優しい旦那さんだね。」




「はい、車までお送りします。」




「悪いね。」




「いえいえ。すみません、遅くまで」




「仕事熱心なのはいいことだよ。でも、頑張りすぎないように。」




「肝に銘じておきます。」




「じゃぁ、気を付けて。」




「社長もお気をつけて。お疲れ様でした。」




社長を見送ってから、会社の前で裕也の迎えを待つ。




それから、20分後裕也が車で迎えに来た。




「ごめんね、こんな時間に」




「いや、大丈夫。こんな時間までお疲れ様。」




「ありがとう。もしかして寝てた?」




「いや、起きてたよ」




「そっか」




「あ、コンビニよっていい?」




「うん。あ、裕也どっかでかけた?」




「ううん?なんで?」




「いや、なんでもない」




私がそう聞いたのには理由があった。




裕也から嗅ぎ慣れない匂いがしたから。




「それかさ、誰かのこと送った?」




「送ってないよ。俺も二次会誘われたけど断って家帰ったしね。」




「そっか」




香水のような、甘い匂いが助手席からしたようなそんな気がした。




私の気のせいだろうか。




その日はあまり気にせず家に帰った。




この日が、地獄の始まりになるなんてこの時の私は思ってもいなかった。