「遅いから心配しただろ」
きょうちゃんの前に並んでいた森川も、振り返って小声で言った。
こちらは、森川裕太。
がっしりした体格に短く狩りあげた坊主頭の、野球部員。
森川とは中学からの仲で、唯一の男友達と言っていい。
大らかな性格の森川は、私のお父さん的な存在だ。
「なんか長引いちゃって…」
ため息をついて言うと、きょうちゃんが顔をしかめて言った。
「誰だったの?呼びだし」
「えっと…3年の横山先輩っていう…」
「え、横山先輩って横山光輝?サッカー部の?」
森川が目を丸くして聞くので、私は頷いた。
「森川やっぱり知ってる?私もどっかで見たことある気、したんだよ」
「いやいや、横山先輩だったら、私でも知ってるから」
きょうちゃんに、呆れたように肩をすくめて言われる。


