* 天気のいい、朝。 いつもどおりの時間に部屋を出て、アパートの階段を降りながら、私はよくよく思い出してみる。 あの日のこと。 はじまりの日のこと。 生徒会室でのこと。 ――『俺の女になれ』 ――「無理です」 ――『無理は、無理』 ――「無理は無理とか、無理です」 そう、私はちゃんとそう言ったはず。 逃げられると思ったら大間違い、的なことは言われたけど。 ちゃんと、拒否したはず。 したはずなのに。 アパートの敷地を出て最初の曲がり角を曲がったところに、その男は今日も立っている。