ワインレッドの柔らかな絨毯。
壁面にはずらりと書棚が並ぶ、異質な空間。
生徒会室。
さながら、王家の一室みたいな部屋。
久しぶりに入った。
もう副会長も流奈さんも、いない部屋。
少し懐かしいこの部屋の中でも、ひときわ目立つ、正面奥の大きな木製テーブル。
その向こう側には、ゆったりと足を組んで椅子に座る、愛しい人の姿。
背後の窓から差しこんだ午後の鈍い光が、あの日と同じように彼の輪郭を縁取っていた。
忘れたくない、この瞬間を。
会長がここに、いたことを。
「…桜田未来」
通る低い声に、名前を呼ばれて私は少し笑う。
柔らかな絨毯の上をゆっくり歩き、会長席の前で立ち止まると。
優しく目を細めた会長が、私を見た。
…狡い、笑顔だな。


