そして今、見上げた先に、あの春のように彼がいる。
すすり泣く声に包まれながら、低く、静かな声でゆっくりと答辞を読んでいる。
その綺麗な顔には、少しの微笑みがあって。
その綺麗な髪は、今ではもうずっとすっかり黒くて。
…寂しいよ、会長。
待つけど。
ずっと待つけど、寂しい。
置いていかないで。
知らない世界に、行かないで。
自分の卒業式でもないのに、泣くなんて思わなかった。
「…この素晴らしい思い出たちを糧に、それぞれの道を力強く踏みしめていくことを誓います。…卒業生代表、神崎透」
涙で歪む視界の向こうの会長は、涼しい顔で原稿用紙を胸ポケットにしまい。
ステージで一礼しようとして、ぴたりと止まる。
しん、と体育館が静まり返った。
全校生徒が、会長を見ている。


