「…感謝してるんだ、親父には。俺みたいなガキがいれば、周囲からとやかく言われ続けることくらい分かってたはずなんだ。それなのに俺を消さず、捨てず、隠さずに…、実子として育ててくれた。愛情なんてなくて、十分なことを、してくれてるんだ」


笑っているのに、まだ少し声が震える。

こんなこと、誰かに話したのははじめてだったから。



未来がそっと、俺の目元に触れた。


視界が、白い。


泣くかよ、アホ。

さっきから泣いてんのはお前だ。



泣けない俺の、涙をそっと拭うように、撫でてくれる、指先。




「だから俺は、親父と周囲の期待だけは裏切らないように生きてきた。これからもそうして生きていく」



未来の頬を、今度は両手で覆う。



俺の手があまるくらいの小さな顔が、涙でびしょびしょだ。