春、この人の言葉に傷ついていた自分が、信じられない。


「上とか下とか右とか左とか、よく分かりませんけど」


…言いながら、会長が恋しくなる。



私を庶民扱いしながらも、絶対に見下したりしなかった。

誰のことも。


文化祭に来た小さな子どもにさえ視線を合わせて笑った、会長。



「好きな人がいるので、横山先輩とは付き合えません」



頭を下げると、涙が出そうになった。


私には、好きな人が、いる。



ハッと短く笑う、横山先輩の声。



「好きな人ってまさか会長?」


私は頭を下げたまま、顔を上げない。


頷きもしないし、首を横に振りもしない。



こんな人に、この気持ち、分かってほしいなんて思わない。