恐くて、認められなかった、ずっと。



でも、今回は、本当。




「迎えにきたら、許しませんよ…」



言った。

言えた。



会長がどんな顔をしているのか、分からない。



私はずっと自分の腕で、視界を塞いでいたから。




きっと愛しいその顔を見たら、縋りついて、しまうから。




会長はなにも言わなかった。



ただ頬に触れていた手が、そっと離れて。



香りが、遠ざかって。



ゆっくりと、存在自体が遠ざかって。




部屋のドアの開く音、閉まる音。

玄関のドアの開く音、閉まる音。



アパートの階段を、ゆっくり降りていく音。




離れていく。



愛しい人。



特別な人。