お母さんはまだ帰ってきていない。
会長を自分の部屋に通して、リビングでインスタントのコーヒーを淹れる。
ちらり、見た時計で、もう22時を過ぎていることを知った。
湯気のたつコーヒーカップを持って部屋に戻ると、会長はぼんやりした顔でローテーブルの前に片膝をたてて座っている。
白いふわふわのカーペットの上にいる会長が、あまりに不似合いで少し笑ってしまった。
「8畳です」
ローテーブルにカップを置くと、乾いた音が静かな部屋に響く。
「会長のマンションの、エレベーターくらいの広さです」
微笑んで言って、カップを持とうとしたら手首を掴まれた。
瞬き。
時計の秒針の音。
会長の、まだ冷たい手。
離してよ。
違う。
話してよ。


