…やっぱり私のことからかってるんだ。
正真正銘の最低だ。
ああ、もう早くきょうちゃんと森川のもとに帰りたい。
私の普通の日常に。
「すみませんが…。2限がはじまるので失礼します」
まだ笑っている会長をきっと睨んで、私は踵を返す。
本当、なんだったんだろう。
そもそもなんなの、この非現実的な部屋。
一瞬でもあんな男を綺麗だと思った自分が恥ずかしい。
出口まで歩いて、勢いよくドアノブを握った時。
背後に気配があって。
ドアノブを握る私の手の上に、大きな手が重ねられていた。
その手は私の手をつつんでドアノブを握っている。
…それよりも、距離が。
すぐ後ろに。
振り返れば体全体が触れるような距離に、会長が立っている。
心臓が、早鐘をうつ。
な、に…。
「…逃げたんだって?」
低く、撫でるような声が、すぐ斜め上から降ってきた。


