会長が素を出している。 やっぱり、ファンの人とかじゃ、ないな。 私は目を伏せる。 相変わらず、意気地なし。 傷つく準備をしている自分がいる。 友梨子さんと呼ばれた女性は、私を怪訝な顔で一瞥してから、 「婚約者に対して、酷いこと言うのね」 黒い髪を耳にかけて、言った。 会長がため息をつく。 私は、会長の顔を見ない。 全然、予想どおり、全然、大丈夫。 だけど心臓はやっぱり、小さく悲鳴を上げるように、音をたてていた。