「なにもないですって」
これもいつもどおり、答えたつもりだったけど、会長があんまり心配そうな顔をするので笑ってしまう。
目に涙が浮かんで。
あれ、笑っちゃうなって、思ってたのに。
会長が、あんまり心配そうな顔、するから、涙が。
なんで、いつも気づいてくれるの?
なんで、いつも現れてくれるの?
私が、泣きそうな時。
ただならぬ雰囲気を察した周囲が、少しざわつきはじめるのが分かる。
だめだ、こんなとこで泣いたら。
それこそ会長が泣かせてるみたいになってしまう。
ぐっと堪えようとした時、会長が私の手を掴んだまま歩きはじめた。
「あ、ただの痴話喧嘩ですから」
爽やかな笑顔で周囲にそう説明して、ぐんぐん歩いていく。
学校の廊下。
みんな見てる。
どこ行くんですか?
そう聞こうとしたけど、声が震えて、涙が出そうになって言えなかった。


