打つ様な頭痛、手足の感覚すら残っていない。それでもなお僕の足は力強く雪を蹴る。
まるで無重力だ。僕はオールトの雲を進むボイジャーの様に、白雲の中を引力に導かれるそのまま——
「待って——待ってくれ夏希——!」
手を伸ばせば届く眼前、夏希は確かにそこにいたのだ。いつか夏の様に、僕が好きだった夏希のままの姿で。
だが届かない。掴もうとすれば虚空に消え、追いかけては遠ざかる。それこそ雲を掴む様に……
ああ夏希、君は峰雲になってしまった。
こんなに近くで隣り合っているのに、君が遠くて遠くてたまらない。
きっと君なら、僕に呆れて笑うのだろう。それでも構わない。僕はただ、あの時の答えを聞きたいだけだから。除雪車にかき消された、僕の言葉の答えを。
「夏希——どうか答えてくれ! 僕は君を——君を——」
愛してたんだ——
