奇数の週に届く手紙の返事を、僕は欠かさず返した。


 月曜日の朝一番に、必ずポストにそれを放り込むのだ。


 桜吹雪く晴れの日も、紫陽花濡れる梅雨の日も、僕は必ず……。


 多分、僕は時の流れが怖かったのだろう。


 卒業式を迎えた頃に身長が急に伸び始め、制服に袖を通した僕の姿を大人たちは見違えるようだと言う。


 まるで体そのものが、夏希の思い出を忘れようとしているようで空しかった。だからせめて、心だけでも夏希のそばにいたかったのだ。


 ……なぜ僕は会いに行かなかったのか。今思えば、方法などいくらでもあったと言うのに。


 あの夏。水害に襲われた故郷を放り出して自分のわがままを叶える勇気など、その時の僕にはなかった。


 次がある。そんな浅はかな楽観を、僕は自分に唱え続けていたのだ。次なんて、永遠に来なかったと言うのに。