いつか夏、峰雲の君


  鮮やかな夏だった。


 目に映る物すべてが美しく、全身で感じる夏そのものが輝いていた。


 稲荷坂の鳥居の様に朱く輝く太陽が、僕の心に彼女という存在を焼き付けていくのだ。


 心に落ちた白は、いつしか峰雲の様に天高く空へと昇っていく。


 僕の人生の全てが詰まる、朱い朱い夏の盛り。僕はその季節の名を、朱夏と詠んだ——