『ありがとうございました。お釣りは結構です』


礼儀正しい亜希斗さん。


運転手さんもニッコリ笑顔だ。


タクシーを降りて、少し歩いたら…


昼間撮影した場所のすぐ近くまでやって来た。


昼と夜とでは、景色が全く違って見える。


広い平地の遠く向こうには、阿蘇の山々がそびえ立ち、その勇姿を堂々と見せつけていた。


でも、夜の山って…


ちょっと…怖い気がする。


私は、この暗い世界のずっと上の方…


天空に視線を向けた。


『うわ…素敵』


その美しさに思わずため息がもれる…


澄んだ空気の中、星達がキラキラ輝いて…


都会とは違う、プラネタリウムみたいな夜空に感動すら覚える。


大地と空と星と山、そして、おぼろげに光る月…


静寂が全てを包むせいで、聞こえるのは…


私達2人の息づかいだけだった。


『雅妃…俺のこと好き?』


え?