その日も、今までと変わらない日常のうちの1つになるはずだった。

7月30日、明日が終わればもう夏休みになるという日。心なしか教室にうきうきとした空気が流れる。まるで夏休みを待つ生徒たちの心が表されているみたい。そしてわたしもその空気を作っているうちの1人だった。

「ひーなっ!おはよう」
明るい声で私を呼んで何かが肩に飛びついてきた。
「わっ、、って由実。おはよ」
由美は天真爛漫な性格でふわふわとしてかわいい。同じ部活に入っていて、すぐに仲良くなった。
「明日が終われば夏休みだねー!」
「でも休みが終わったらテストだよ…」
「陽菜ってば、そんな暗くなること言わないでぇ」
いつものように他愛のない会話を交わす。


「1時間目の準備をしないと」
始業5分前だということに気付いて私は慌ててロッカーに向かった。しかし、私より先にある男子がいたため、私はすぐにロッカーを使うことができなかった。名前は…確か玲央…とかいったっけ。
私のロッカーは縦に4段あるうちの1番上だ。
そして玲央のロッカーは私のロッカーの列の一番下にある。だから玲央がいると私は待たなければならない。
ぼーっとしていると玲央がロッカーを閉めて振り返った。そして後ろに私がいることに気付いて小さく「ごめんね」と言って小走りで教室に戻って行った。
今まで全く接点がなかった玲央だが、最近ロッカーの前で待っているとこうしてよく声をかけてくれる。私みたいな暗い子に声をかけてくれる男子なんて珍しいから私は少し戸惑っていた。
「やばいっ、1時間目始まっちゃう」