お腹がいっぱいになった空はそのまま頭をグラグラと動かし始め、ソファで眠ってしまった。蘭はすぐに毛布を持ってきてその小さな体にそっとかける。

「……お風呂に一緒に入った時、空くんの体にたくさんの傷があったんです。虐待の証拠ですよ」

圭介がそう言うと、「日本の警察は事件が起きなければ動かない。この場合はどうすることも……」と碧子が返す。しかし、言葉とは裏腹に碧子の目は空を心配げな目で見つめている。

「このままじゃ空はいつか殺されちゃう!私たちにできることはないの?」

ゼルダが震える声で言いながら空の頭を撫でる。もしも空が殺されてしまったら、冷たい台の上での再会になってしまったら、空はもう二度と笑うことはない。こんな体温も消えてなくなってしまう。全て、なかったかのように。

『ごめんね、ごめんね……』

『目を開けて!目を開けてよ!!』

蘭の頭の中に、子どもを失った親のことが浮かぶ。あんな風に空は愛されていない。しかし、助けも上げられないこの小さな命を見捨てたくない。