勧められたソファに人形のように動くことなく座っていた蘭は圭介にコーヒーの入ったマグを手渡される。蘭は「ありがとうございます」と言い、コーヒーに口をつけた。

「おいしいです」

「よかった」

蘭がそう言うと、圭介は嬉しそうに微笑む。アーサーも「うまっ!」と笑いながらマグカップに口をつける。

「それにしても、今日も仕事大変でしたね〜」

「お前、解剖は観察してるだけだろ〜。本当に解剖してる俺らはもっと大変なの〜」

アーサーと圭介が話している間、蘭は窓の外の景色を見つめていた。黒くなった空に満月が輝いている。

しばらくしてから圭介が「そろそろ夕飯作るか〜」と言い立ち上がったため、「お手伝いいたします」と蘭も立ち上がる。

「えっ?いや、いいですよ!神楽さんはお客さんですし」

顔を真っ赤にして言う圭介に対し、蘭は表情を変えることなく「お手伝いしたいのです」と言う。しばらく見つめ合った後、圭介が折れた。