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あの日(あのひ)


「えーん、えーんっ、ひっく」
泣き声が聞こえる。なにかと思いそっちを見ると私と同じくらいの男の子が泣いている。

どうしたのだろうと思い駆け寄ると、男の子が泣き止み甘えるような目でこっちを向いて言った。

「指をね、指をぷちってね、やったらね、血がね、、、うわあああん。」
指を切ったのか?私がその子の指を見ると人差し指に傷跡があり、そこから血が川のようにどくどくと流れていた。
こんな時はどうすればいいのだろう?

 前にお母さんが私が指を怪我した時に舐めてくれたことがあった。あ、そうか。舐めればいいのか。私はその子の手を取り、
「大丈夫だよ。私が治してあげる。」
そう言うと、その子の傷を舐めた。

鉄のようななんとも言えない味が口の中に広がった。しばらくしてから舐めるのをやめ、指を見ると血は綺麗に止まっていた。

「わあ、ありがとう!」
その子は笑顔で私に言った。
「うん、良かった!」
私も無意識の内に笑顔になっていた。