政略夫婦の授かり初夜～冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す～

　鮮明に覚えている。『両親から受けるはずの愛情を与えられずにきたんだ。どれほどつらい思いをしてきたか。これからはそんな思いをさせたくない』と言った彼の言葉を。

「でも知っていたからといっても、弦さんが未来に同情から結婚したとは限らないじゃない。結婚前に何度かデートをしていたし、そこで未来のことを好きになったのかも」

「ううん、それはないよ。そもそも弦さんのような素敵な人が、私を好きになってくれるはずがないんだよ」

　いつになく卑屈になる。すると美香は私の両頬をパシンと叩いた。

「なに言ってるの？　未来は可愛くて優しくてすごくいい子だから！　最近会ったときに言ったでしょ？　もっと前向きにならなくちゃって。それなのに、前よりうしろ向きになってどうするのよ」

　唖然とする私に美香は厳しい口調で続ける。

「それに大切なのは弦さんの気持ちじゃない、未来の気持ちでしょ？　未来はどうしたいの？　弦さんに同情で結婚してもらったから、もう一緒にいられない？　離婚したいの？」

　一緒にいられない？　離婚したい？

　美香の言葉を自分の心に問えば、すぐに答えは出た。