ウエディングドレスとタキシード姿で映る私たちは、幸せな新郎新婦のよう。でも実際は違う。愛のない政略結婚のはず。

「挙式のとき、どうして弦さんはあんなことを言ったんだろう」

『生涯かけて、キミを幸せにすると誓う』

 私にしか聞こえない小さな声で囁いた言葉は、あまりに衝撃で耳を疑った。

 弦さんだって私と同じように、両親に言われて仕方がなく結婚を受け入れただけでしょ?

 それなのに結婚するまで私と過ごす時間を多くとり、デートだと言って様々な場所へ連れていってくれた。

 最初は緊張でいっぱいだったけれど、会う回数を重ねるごとに楽しんでいる自分もいて、なにより彼と過ごす時間はとても心地よいものだった。

 口数は少ないし、なにを考えているのかわからない時もある。でも時折見せる笑顔や、優しさに何度も心がときめいた。

 弦さんは噂で聞いていたような人ではない。冷徹な人なんかじゃなかった。彼のことを知れば知るほど、ドキドキしている自分がいて本当にどうしたらいいのか……。

 再びテーブルに戻り、弦さんが用意してくれた朝食をいただく。