「……今の母親は、本当の母親ではないんだな」

「はい、そのようです。未来さんが幼い頃に病気で他界されたそうです。ご健在中に関係を持った方と再婚されたようですね。そこから未来さんはだいぶ苦労されたかと」

「そのようだな」

 よくもここまで細かく調べられたものだ。
 目を通していくたびに心が痛む。

 未来は継母に厳しく躾けられてきたようだ。習い事の多さにも驚いたし、高校生まではほとんど家と学校の往復しかしていない。

 やっと大学生になって少し自由な時間を与えられ、友達と過ごす時間も増えたと書いてある。
 父親も継母の手前、未来には冷たく当たっていたとは……。

 裕福な暮らしをしているはずなのに、自由に使えるお金をほとんど与えてもらえず、両親には親らしいことをいっさいしてもらえていない。
 それでも未来は逆らうことなく、両親に言われるがまま生きてきた。

 報告書を読むとすべて辻褄が合う。きっと俺との結婚も両親に言われてのもの。拒否権などなく、むしろ破談になるようものならひどく叱られると思っていたのだろう。

 だから顔合わせの日に、あんなに怯えていたのかもしれない。