政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~

 お父さんの隣に座るお母さんにも同じような言葉をかけられ、無理に笑顔を取り繕い、「ありがとうございます」と答えた。

「一度、ふたりで会ってきなさい」

「はい、わかりました」

 娘が結婚するというのに、どこか他人事のようなやり取り。だけどこれが私たち親子の関係を物語っている。

「すみません、明日も大学があるので先に休みます」

 渡された封筒を手に立ち上がると、ふたりとも「おやすみなさい」と言うだけ。
 家政婦に「ごちそうさまでした」と告げ、そっとリビングを後にした。

 広々とした廊下を進み、二階へと向かう。ひとりでは使うには充分すぎる二十畳の部屋。
 パタンとドアを閉めて、部屋の中央にあるソファに腰かけた。

「結婚、か」

 手にしていた封筒をテーブルに置くと同時に、静かな部屋に響く自分の声。結婚に自由がないのは理解していたけれど、いざその時がくると複雑だ。

「ママもそうだったの?」

 棚に飾られている幼少期の自分と映る、今は亡き母親に問いかける。

 お母さんは継母。私を産んでくれたママは、私が五歳のときに病気で亡くなった。
 持病があり、あまり丈夫ではなかったけれど、優しくていつも笑っていた記憶しかない。そんなママとお父さんは、やはり親に決められた政略結婚だった。