政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~

「行くぞ、竹山」

「はい」

 弦さんに呼ばれて竹山さんも玄関を出ようとした時、振り返り私にそっと言った。

「美香さんによろしくお伝えください」

「あっ、はっ、はい!」

 急に柔らかい表情で美香の話をされて戸惑い、声が上擦る。

「では失礼します」

 竹山さんはていねいに頭を下げて静かにドアを閉めた。

「美香さんによろしくって……やだ、美香ってば竹山さんに『美香さん』って呼ばれているんだ」

 そういうことは教えてもらっていないから、意外で顔がニヤける。

 リビングに戻ると住み慣れた空間のはずなのに、弦さんが明日までいないのかと思うとやけに広く感じる。

「たった一日じゃない」

 寂しさを払拭するように大きな声で言った。

 休日は家政婦を頼んでいない。いつも弦さんとふたりで軽く掃除をするくらいだった。