玉の輿を夢見ていたらしい。財力がなかったら、口数が少なくて一緒にいてもおもしろくない俺になど興味がないとはっきり告げられた。それから俺は恋愛から遠ざかっていった。

 それから勉強に明け暮れ、大学を卒業して父さんの会社で働き始めた俺は、自分でも認める仕事人間になった。
 仕事は決して裏切らない。努力した分だけ自分に返ってくる。成果がはっきりと数字に出ることにやりがいを感じ、ますます仕事にのめり込んでいった。

 そんな俺を心配した両親が縁談話を持ってくるようになったのは、俺が二十五歳を過ぎた頃から。

 守るべきものを得ることで、もっと成長できるだろうと言われ渋々了承したのが運の尽き。何人もの婚約者に悩まされることとなった。

 恋愛結婚できないのなら、せめて理想の家庭を築いていきたい。それが俺の結婚相手に求めるただひとつの条件だった。

 他人に家を任せることをしたくない。自分たちの生活は自分たちで築くべき。それが両親の教えでもあった。

 俺自身も会社では気が休まらない分、家ではゆっくりと過ごしたい。だから妻となる婚約者には、自分とともに家事をしてほしいと頼んだ。

 それが予想外だったようで、それまで結婚に前のめりだった彼女たちから婚約破棄を告げられてきた。