平日は毎日来てくれるよう手配してくれて、おかげで家事や料理をお願いできているけれど、なんだか申し訳なくなる。

「顔を洗ってくるといい。その間に準備をしておくから」

「すみません」

 謝罪の言葉を口にすると弦さんは小さく息を漏らし、火を止めて私のもとへ歩み寄ってきた。
 そして私の前で足を止めると屈んで顔を覗き込む。

「俺は未来に『すみません』じゃなくて、『ありがとう』って言われたほうが嬉しいんだけど」

「あっ……」

 そうだよね、こういう時は『ありがとう』だよね。

「ありがとうございます、弦さん」

 言い直すと、彼は満足げに笑った。

「ん、それでいい。顔を洗っておいで」

 優しい言葉とともに頭を撫でられ、ドキッとしてしまう。

「は、い」

 弦さんはずっと優しかった。でも想いが通じ合ってからは優しさも甘さも増した気がする。おかげで私はドキドキさせられっぱなし。