その表情は心なしか明るい。悪い病気が見つかったわけではない?

 疑心暗鬼しながら隣に座る未来を眺めていると、彼女はおずおずとある物を俺に差し出した。

 それを見て目を疑う。表紙には『母子健康手帳』と書かれていたから。

「え? 未来、これは……?」

 動揺しながら手帳と未来を交互に見ると、彼女は柔らかく笑った。

「体調が優れなくて、美香に付き添ってもらい病院へ行ったら、妊娠七週目と言われました」

「七週目って……」

 嘘だろ? 本当か? 未来が妊娠しているなんて。

 一瞬頭が真っ白になる。だけど次第に嬉しさと父親になるという責任感。そして沸き起こる感動に襲われ、熱いものが込み上がる。

「弦さん?」

 未来にそっと名前を呼ばれ我に返る。俺がなにも言わないから不安になったのかもしれない。